『鬼の研究』(馬場あき子)に、能『鉄輪の女』の記載がある。(原典は『平家物語:剣の巻:鉄輪の女』) 以下に其の一部を引用する。
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嵯峨天皇の代の頃、ある公卿の女、あまりに妬み深く、貴船に七日籠り鬼になることを求めたところ、宇治の川瀬に潔斎して鬼となるよう至現があった。
女は喜んで、丈なす髪を五つに分け、五つの角に擬して結い上げ、顔には丹を塗り、鉄輪(かなわ)を戴き、その三つの脚には松明をともし、さらに松明に火をつけて口にくわえ、夜更けてのち都大路へ走り出して行った。
頭より松明の炎はふき流れ、眉太く鉄漿(かね)ぐろに、顔も赤く、身の赤いので、それはまさに鬼であったが、ついに宇治川に二十一間浸かり清まって、生きながらほんとうの鬼になったという。(後略)
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謡曲集の『鉄輪』では以下のように書かれている。
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身には赤き衣(きぬ)を截ち着、顔には丹(に)塗り、髪には鉄輪を戴き、三つの足に火を灯(とも)し、(中略)、気色(けしき)変じて今までは美女の形と見えつるに、緑の髪は空さまに、立つや黒雲の、雨降り風となるかみも、思ふ仲をば裂けられし、恨みの鬼となって、人に思ひ知らせん、憂き人に思ひ知らせん (後略)
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ここで、鉄輪とは五徳(ごとく)のことであるが、数十年前までに日常の生活に使われていた物で、鉄製の輪に三本の足をつけた器具で火の上に置き鍋などをのせていた。
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私が興味があるのは、この鬼になる女の怪異な姿である。
即ち、『丈なす黒髪を五つに分け、それを五つの角に擬し、鉄輪(五徳)を逆さまに頭に載せ其の三つの足に松明を灯(とも)し、更に、顔には丹を塗り、かつ、炎のついた松明を口にくわえる』という姿は、実に異様であり、この異様な姿は何に基づくものだろうか? 何か、『言われ』があるに違いない。
私は此の『鉄輪の女』の物語も、さることながら、この鬼となった此の女の異様な姿そのものに興味と関心がある。
このような姿にするには何か『言われ』があるのだろうか?もし、あれば、私は其れを知りたい。