『池水は濁りににごり藤波の影もうつらず雨降りしきる』 (伊藤佐千夫)
私の好きな歌の一つである。作者の心の陰翳が分かるような気がする。
ところで『影もうつらず』を『影もうつさず』にしたほうが、私としては自分の好みにあうような気がする。
***
『影もうつらず』だと、純然たる自然描写に見えると思うが、『影もうつさず』だと、純然たる自然描写を超えて、或る『感情』が歌の表面に顕(あら)われるてくるように私には感ぜられる。
その『感情』とは『鬱々たる心情』であって、その心情が直截に、読者たる私に訴えてくる。
そして私は直截に其の感情に共感できる。
だから『影もうつさず』のほうが、私は、より強く此の歌に共感できる。
***
上記したことは歌の素人の独断である。