カントールの超限集合論に対する関心は私は素人レベルでもっていて、いくつかの一般読者向けのその方面の本(勿論素人向け)を読んできたが、それらの本では、カントールの宗教への関心は否定的・批判的であった。但し、『「無限」に魅入られた天才数学者』(アミール・D・アクゼル著、早川書房)という本では、カントールの無限論とユダヤ神秘主義の関連を肯定的に書かれていて、それらの関連性について詳しく解説している。
しかし、他の本(と言っても数冊程度だが)、カントールの宗教への傾斜は数学者として邪道だとして否定的に書かれている。
ところが『無限とはなにか?』(ローレン・グレアム他著、オーム社)の本では、カントールの超限集合論は、宗教と密接しているとしている学派について書かれている。
カントールの超限集合論はフランスでは純数学として研究されたようだ。ところがモスクワ学派という学派があって、その学派ではカントールの超限集合論を神秘主義として肯定的に発展させたらしい。
実はこの本は私には『及びでない』本で私レベルの本ではないのだが、ちょっと覗いてみたくて図書館から借りた。どうせ読んでも私には理解できない内容だから、パラパラとその内容を覗き見ているだけで、いいかげんな読みかたでチャンとした感想などかけないが、カントールの集合論が宗教と深く関係している数学研究者がいる(モスクワ学派)というのは驚きだった。
たしかに無限という概念は宗教と深く関連しそうだ、というのは素人でも推定できるが、カントールの実無限の発見を、きちんと神秘主義と関連づけている数学者に存在するというのは新鮮な発見だ。そこらあたりをキチンと理解したいのだが、なにぶん当方の知識が貧弱過ぎて手におえない。
ただ、カントールが後年、彼の集合論を宗教と結びつけて考えていた、ということに対する否定的批判は、ある偏見だった可能性がある。神と無限の問題。これは世界の多くの玄人数学者が嘲笑的に避けているとしたら、これは偏見だと言えるのではないか。
モスクワ学派というのは、よく知られていないらしい。この本はそういう意味で貴重な本のようだ。尤も数学と神秘主義は歴史的には古いつきあいはあるのだが。